よくある質問(FAQ)

熱電対・補償導線

熱電対の絶縁抵抗が低下した場合の影響は?

 熱電対はその設置箇所の影響、絶縁材の経時的な劣化、製造中の湿気の侵入等が原因で現場 にて使用中に絶縁抵抗が低下することがある。問題なく使用できるケースが多いが、その場合、実際にどの程度の影響があるのか?また、どの程度の絶縁抵抗低下まで許容できるか?

1.はじめに

 熱電対の健全性を簡便に評価する際に、一般的に導通があることと絶縁抵抗が高いことを目安とする場合が多い。製品出荷の場合も受け渡し検査として、JIS C1602/1605 に規定があるのは熱起電力特性と絶縁抵 抗である。現在のJISはIEC規格に整合されたため、出荷時の絶縁抵抗値はかなり高く規定され、100MΩ /500VDCとなっている。それ以前の日本独自の規格であった頃は、5MΩ/500VDCであった。この変更には性能的には根拠はなく、IEC規格にならって値を合わせただけであり、絶縁抵抗がここまで高くなければならない理由は全く明示されていないが、ほとんどの場合、この数値のみで性能の良否を判断している。
ところが、実際の運用面をみると長期間の使用で絶縁抵抗が低下したにもかかわらず、正常に温度計測ができている例が多い。そこで、実験と理論を交えて熱電対の絶縁抵抗値と誤差の関係を調査した。

2.実験による評価

(1)実験方法
下記の回路を作り、絶縁抵抗低下の状況をシミュレートした。線間に挿入した可変抵抗器を変化させ、どの程度の線間抵抗(絶縁抵抗)が熱電対の出力(熱起電力)に影響を与えるかを実測する。

実験方法の画像

(2)結果
下表に示すように、若干ばらつきがあるが1kΩ程度までは熱電対の許容誤差程度である。

実験結果の画像

備考:上のデータのうち、200MΩと100kΩのものは実製品を吸湿させて、600°Cで試験したものであるが、そのまま引用した。

3.理論による評価

(1)等価回路
熱電対回路の途中で絶縁抵抗が低下した場合の等価回路を下図のように考えると、生じる誤差は次式で表わされる。

等価回路の画像

R = r2×r3 /(r2+r3)
E0 = R×EA / (r1+R)
 EA: 熱電対の熱起電力(mV)
 r1: 熱電対・補償導線の抵抗(Ω)
 r2: 絶縁抵抗(Ω)
 r3: 計器の内部抵抗(Ω)
 E0: 計器への入力電圧(mV)

(2)計算結果
温度800°C、熱電対長さは試験のものと同等の条件で計算した結果を示す。

計算結果の画像

4.結論

 実験結果と理論の計算結果は、数値としてはかなり異なるが、傾向としてどちらもほぼ同様な結果が得られた。すなわち、絶縁抵抗は50kΩ程度あれば性能に悪影響は与えない。また、1kΩ程度の場合で、JISクラス1と同等の誤差である。
 従って、実際に使用する現場での経験則はほぼ正しいものといえ、JIS規定の抵抗値以下に絶縁抵抗が低下しても、正確な温度計測は可能であるといえる。
 但し、温度計測上、問題のない程度の絶縁抵抗低下でも、時間の経過とともにさらに低下する恐れはあ る。従って、絶縁抵抗が1MΩを下回るような場合は、早めの交換を推奨する。また、絶縁抵抗の低下時はノイズの影響も受けやすいので、周囲にノイズ源がある場合は注意が必要である。

技術資料